日本心理学会第81回大会 シンポジウム

2017年の日本心理学会大会は久留米大学を準備委員会として久留米シティセンター(福岡県久留米市)で開催されました。

当研究会は会期2日目の朝一のセッションでシンポジウムを開催しましたが、立ち見も出るほど多くの方にご参加いただくことができました。

今回は心理学と疫学の融合という心理学では異色の内容を企画しましたが、予想を上回る聴衆にお越しいただき、有意義なセッションだったのではないかと思います。

ご来場いただいた皆さま、ありがとうございました。


はじめに、当研究会副幹事で本シンポジウムの企画者である山田先生(慶應義塾大学)から、シンポジウムの趣旨と話題提供の先生方のご紹介がありました。

心理学に疫学の方法論を、疫学に心理社会的要因を導入するためにはどうすればいいのか?という挑戦的な企画を立てた経緯を熱く語られました。


「ストレス関連疾患・作業関連疾患の発症に寄与する職業因子ならびに発症を予測する炎症マーカーに関する疫学研究:ORION Study」
最初の話題は、中田先生(産業医科大学)から中小企業の従業員を対象とした疫学研究をご紹介いただきました。

中田先生は長らく米国(国立労働安全衛生研究所[NIOSH])で活動されてましたが、帰国後にコホート研究を開始されました。ORION Studyと名付けられたこのコホート研究を題材に、疫学への心理社会的要因の導入について苦労話も交えてご紹介いただきました。


「心理社会的因子と生活習慣病に介在するバイオマーカーの疫学的検討ー日本多施設共同コホート研究(J-MICC-study)SAGAー」
島ノ江先生(佐賀大学)は、疫学の中で心理社会的要因の重要性を感じておられ、心理社会的な要因による疾患発症のメカニズムの解明と予防を目指したご研究を精力的に行われています。

多施設共同研究のJ-MICC-studyの佐賀サイトでのご研究について、疫学でどのように研究が行われているのかも含めてご紹介いただきました。


「地域ならびに組織コミュニティにおける相互協調性と炎症反応に関する文化心理学研究」
内田先生(京都大学)からは、文化心理学研究の中で生理指標を用いたご研究をご紹介いただきました。

内田先生のご専門は文化心理学で、幸福感などの感情や認知の国際比較文化研究を実施しておられます。心理社会的要因によって遺伝子発現が異なるという興味深い研究についてご紹介いただき、また、企業を対象とした最近のデータについてもご紹介いただきました。


指定討論
最後に、当研究会の代表である大平先生(名古屋大学)から、全体を通してのご感想と、各演者に対するコメントと質問をいただきました。大平先生は先駆け研究者の一人として、我が国のPNEI研究を牽引されてこられました。最近では脳科学との融合研究を精力的に行われています。

討論の最後には、心理学と疫学の融合のためのご提案も示していただき、今後の異分野融合研究への実現に向けて議論していくこと、そして協働できる仲間づくりをしていく重要性を述べられました。